白駒妃登美の「おすすめ図書」

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『日本』という国名の由来は? 日本の国旗はなぜ『日の丸』なの? 子どもに訊かれて、正確に答えられる大人はどれほどいるでしょう?同様に、ふだん何気なく使っている「お父さん」「お母さん」という言葉が、もともとどのような意味を持っているのか、その素敵な語源を知る日本人は少ないと思います。著者である境野 勝悟(かつのり)先生は、著名な東洋思想家であり、 日本のこころを説く「道塾」の主宰者でいらっしゃいますが、かつては 神奈川の超名門・栄光学園の国語の教師でした。 栄光学園はミッション系の学校であり、校長は常に外国人の神父さんが務めるそうです。

ある日、境野先生は、校長から「“さようなら”の意味は?」と問われて、 「はた?」と窮してしまいました。 このように、日本人であるがゆえに、日本的なるものの根源について、 かえってその本来の意味や成り立ちに無自覚なままであることは、意外に多いものです。

境野先生が、校長先生の問いに対する答えを見い出したのは、およそ 20年後のことだったそうです。 無数の文献を紐解く中で、「こんにちは」「さようなら」という挨拶に、 私たちのご先祖様が大切にしてきた思いが込められていると気づいた 境野先生は、感動で言葉を失いました。

本書は、東洋思想家として日本の伝統文化に造詣の深い境野先生が、 「日本のこころの教育」というテーマで、岩手県の私立花巻東高校で 全校生徒を対象に行った講演がもとになっていて、「日本人とは 何者なのか」ということを、大変わかりやすく伝えてくれます。 2時間近い講演の間、生徒たちは私語一つ交わさず聞き入ったといいます。 その感動を伝える生徒たちの感想文が、本書の後半部分に収録されていて、 その感想の素晴らしさにまた感動し、若い世代の豊かな感性に触れ、 希望を抱く人も多いでしょう。

境野先生のこの講演によって、花巻東高校の校風は劇的に変わり、 地元の誇りと言われるようになり、やがて高校野球の名門に育って いったのです。 本書は、「日本人の遺伝子」を目覚めさせる一冊、日本人必読の書です。

「戦前の日本はね…」 私は明治生まれの祖父母にとてもかわいがられて育ちましたが、こんなふうに懐かしんで祖父母がかつての日本の姿を語ってくれたことは、一度もありません。 おそらく先の戦争での敗戦と、その後のGHQによる統治の影響で、当時の日本人はみな「戦前の日本のすべてが悪かった」と勘違いし、口をつぐんでしまったのでしょう。 戦前の日本って、本当はどんな国だったんだろう? そこに生きていた人たちは、何を考え、どんな日々を送っていたんだろう? 私はずっとそんな疑問を抱いてきました。 その疑問を解いてくれたのが、この本です。 かつての日本人は、こんなに素敵だった…! そして、その日本人に、日本という国に、これほどの思いを寄せて くれる人たちがいる…!! このことを、私たち日本人は知らなければいけないと思うんです。

この本を読めば、東日本大震災に際し、なぜ台湾の人々が天文学的な数字にのぼる莫大な支援を送ってくれたのか、その秘密がわかります。そして台湾の人々は、支援を送ってくれただけでなく、2011年暮れに新聞社が実施した「この一年、あなたが最も幸せを感じた出来事は?」というアンケートで、“日本への義援金が世界一になったこと”を1位に選んでくれたのです。 私たちが台湾を訪れ、街行く人たちに「ありがとう、ありがとう」と伝えると、逆に台湾の人たちから感謝されたり、とても親切にされました。「なぜそんなに感謝してくれるの? なぜそんなに親切にしてくれるの?」と問うと、台湾の人たちはみな同じ答えを返してくれます。 「これはね、あなたたち日本人が私たち台湾人に教えてくれたことだよ」

戦後70年が経つ今でも、台湾には「リップンチェンシン」という言葉があるそうです。漢字で「日本精神」と書きます。「あなたにはリップンチェンシンがあるね」と言われることが、台湾では最上の褒め言葉として受け取られます。 「あなたにはリップンチェンシンがあるね」とは、こんな意味だそうです。 「あなたは、勤勉で、誠実で、親切だね。そして責任感があって、自分の仕事に誇りを持っているね。さらに“自分さえよければ”とか“今さえよければ”じゃなく、みんなのこと、次の世代のことが考えられる人だね」 つまり、「あなたにはリップンチェンシンがあるね」とは、「人として最高の美徳が身についているね」という意味なんです。

私たち日本人は、台湾の人々と手に手をたずさえて、この日本精神を継承し、次の世代に受け継いでいく使命がある!この本を読めば、そんな日本人の矜持を取り戻すことができるでしょう。 ちなみに、著者の楊 素秋さんは、台湾と日本を「二つの祖国」と表現していらっしゃいます。そして「2つの祖国を結ぶ懸け橋の、釘1本になりたい」というのが、彼女のささやかな願いなのです。 私たちも、「懸け橋になる」なんていう大それたことはできなくても、その懸け橋の「釘1本」になら、なれるんじゃないでしょうか。自分の置かれた場で、できることを一つ一つやっていこう!そんな前向きな気持ちにしてくれる本です。

「経営の神様と言われ、人材を育てることにも定評のあった松下幸之助さんが、ある時、こんな質問を受けました。 「人を育てる上で、真っ先にやるべきことは何ですか?」 これに対し、松下幸之助翁は、一瞬のためらいもなく、こうお答えになったそうです。 「まずは伝記を読ませることです」 私はこの話を聞いて、「なるほど~!」とうなりました。

確かに、夢や志は、何もないところからは生まれません。美しい先人たちの生きざまを知るから、「それなら私もこういうことをやってみよう」「僕もこんなふうに生きたい」と、夢や志が育っていくのでしょう。 私も松下幸之助翁を見習って、さまざまな伝記を買ってきては、子どもに読み聞かせをしてきました。その中で、私の一番のオススメが、この伝記シリーズです。 まずは、人選が素晴らしいんです。 20世紀最後の教育者と称えられた、森信三先生がセレクトした、21人。日本人だけでなく、世界の偉人も入っているところがニクイ。 そして何よりも、森信三先生と愛弟子の寺田一清先生の温かな視点で、偉人たちの人間性にスポットを当てているところにシビれます。偉人たちが「雲の上の人物」でなく、すぐ近くにいてくれる、友だちのように感じられるのです。 さらに、この21人には共通点があります。 有名、無名を問わず、「公のために生きた」ということです。

九州大学医学部名誉教授の井口潔先生の研究によると、人間の脳は、生まれて10年間で感性を司る大脳辺縁(へんえん)系が発達し、その後の10年で知性を司る大脳新皮質が発達するそうです。つまり10歳ぐらいまでの子どもには、知識を詰め込むより、豊かな感性を育む教育こそが望ましいということです。 感性が豊かであるということは、「真善美」がわかるということです。「真善美」のわかる豊かな感性は、幼い頃に、美しい生きざまに触れることで育まれるのです。 知性が生きる術(すべ)であるのに対し、感性こそが生きる力です。子どもたちの感性を育むために、そして大人がいつまでも美しい心を持ち続けるために、この伝記シリーズが、多くの人に読まれることを願ってやみません。

 

あなたはWBC日台戦の感動を覚えていますか? そしてあの原点が84年前にあったことをご存知ですか? WBC日台戦を見た台湾のおじいちゃん、おばあちゃんは、みな「嘉農の再来だ」と涙したそうです。

すべての日本人に知ってほしい。 かつて日本と台湾が手を携え、遥かなるものを求めて、ともに歩んだ時代があった、ということを…。

1931年、日本統治下の台湾。 それまで1勝もしたことがないKANOこと嘉義農林学校が、日本人監督に率いられ、夢の甲子園に向かって行く! 足の速い台湾の原住民族、打撃が素晴らしい漢民族、そして守備に長けた日本人の3つの民族の混成チーム 「KANO」が、甲子園に大旋風を巻き起こした実話をもとに制作され、台湾映画史上、空前の大ヒットとなった 映画『KANO』のコミック版。 仲間を信じることの大切さと美しさ、目の前の課題にひたむきに向き合うこと、さらに最後まで絶対にあきらめない気持ち。 人生で大切なことが、すべてこの本には詰まっています。

クライマックスは、甲子園の決勝戦。 詰めかけた5万の大観衆が「天下の嘉農!」と大合唱するシーンです。 これを当時ラジオで聞いていた台湾のおじいちゃん、おばあちゃんが、WBCの時に思い出し、涙を流したそうです。 きっとあなたも少年たちの心の成長物語に感動し、心の中で「天下の嘉農!」と大声援を送りたくなるはずです。 そして感動のエンディング。 準優勝楯を持って台湾に帰る少年たちを待っているものとは…!? 台湾の日本統治時代の象徴である野球、教育、農業をからめた原作者の手法に、脱帽です!

私には、21世紀にどうしてもよみがえらせたい日本人の感性があります。それは「粋か野暮か」という価値観です。 たとえば、あなたが江戸時代に生きていると仮定してください。江戸時代も、お金を借りた時には、当然借用書を書きます。 これがもし欧米なら、「期日はいついつで、それまでに返せなかった場合は、利子がどういう計算になって、担保はこれで」というぐあいに、膨大な但し書きが加えられるでしょう。では、江戸時代の日本では、どんな但し書きが交わされたと思いますか? 「期日までに返せなかった場合は……。 なんと「お笑いくだされ」の一言だけなんです! これでトラブルにもならずに成り立っていた社会って、素敵ですよね!? 信頼してお金を貸してくれた人を裏切るのは、「野暮」、だから、江戸っ子たちは、自分のプライドにかけて、「粋な生き方」を理想とし、実践したんですね。 つまり粋に生きるには、恥を知らないとダメなんです。道徳的に問題のあることを、「法律に違反しているわけではないですよ」なんて厚顔無恥に言ってのけるような人は、逆立ちしたって、粋にはなれません。 私のイメージする“イキな人”って、こんな感じ。

★恥を知っている。だからこそ、相手にも恥をかかせない。

★思いやりにあふれた行動を、人知れずやっている。つまり陰徳を積んでいる人。

★「生きている」のではなく、「生かされている」ことに気づいている。だからいつも感謝の心を持ち、謙虚でいられる。

★特別なことがなくても、日常に感動や幸せの種を見つけられる。

★「自分さえよければ」「今さえよければ」というのは、究極の野暮。みんなのことが考えられる、次の世代のことが考えられる…

そんな人が、イキ!! この本の著者で江戸しぐさの語り部・越川禮子先生はおっしゃいます。つまり“粋”とは、「公に生きる」ということなんだ、と。 恥を知り、惻隠の情を持って平和的に生きてきた江戸っ子たち。その叡智が、この本には詰まっています。私たちが現代社会に今すぐ応用できるようなヒントも盛りだくさんです。

「正しい、間違っている」で考えても埒はあかない場合が多い。そんな時、「粋か野暮か」で考え、粋な方を選択しませんか? この本を読み終わる頃には、あなたも粋な江戸っ子気分! きっと、今よりずっと涼やかな心で生きられますよ。

…と、ここまで書かせていただいた上で、どうしても付け加えたいことがあります。ここまで読んでくださった方は、この本が、個人の生き方のヒントをくれる本であり、自己啓発書のような印象をお持ちになったのではありませんか? 実は、この本の伝える内容は、もっともっと深いのです。「繁盛しぐさ」の名の通り、この本には商売の極意が秘められています。 江戸時代の日本は、世界史の中でも数々の奇跡に満ちています。200年以上の平和が続き、自然と人間が共生し、文化が花開いた時代、それが江戸時代です。さらに、つぶれるお店なんて滅多になく、驚くほど失業率が低かったのが、江戸の町です。環境と経済が両立していた、そんな輝かしい一面があったんですね。 そんな社会を実現した、江戸商人たちのしなやかで、したたかな生き方を、そして彼らが培ってきた商売繁盛の極意を、存分に味わってくださいね!

かつて私は日本が嫌いでした。戦後教育を受けて育った影響で、日本人は世界中から嫌われているに違いないと、私は決めつけていたのです。 嫌いな日本に留まりたくない、将来は海外に繋がる仕事がしたいと思った私は、大学を卒業すると、航空会社に就職しました。そして希望していた国際線に乗務するようになったのですが、海外に行って驚きました。日本は、世界中から嫌われているなんて、とんでもない! 実際はその逆で、初めて会った人が、私を信用したり、親切にしてくれるのです。 「どうしてそんなに私によくしてくれるの?」と尋ねると、彼らは決まってこう答えます。 「あなたが日本人だから」 “日本人”であるということが、まるでブランドのように感じられました。

私が海外で出会った人の中には、こんな話をしてくださった方がいらっしゃいます。 「僕は以前、日本に住んでいたことがあるけど、驚いたよ。クリーニングに出していたコートを取りに行ったら、きれいにアイロンがけされたコートと一緒に、ビニール袋に入った小銭を手渡されたんだ。僕のコートのポケットに入っていたんだってさ。僕はいろんな国に仕事で行ったけど、そんな経験は日本だけだよ」 この紳士の言葉は、以下のように続きます。 「お金が戻ってきたことだけでも驚きに値するのに、そのクリーニング屋の店員さんはね、“コートをお預かりする時に、私がきちんと確認していなくて、申し訳ありませんでした”と、丁寧にお詫びしてくれたんだよ。いやぁ、感動したよ」 さらに、こんな冗談とも本気ともつかないことをおっしゃる方もいらっしゃいました。 「私はね、国際的なNPO法人に関わっていてね、いろんな国の人が役員を持ち回りでやるんだけど、日本人が会計をした時だけよ、不正がなかったのは」 こんなエピソードを耳にするたびに、私は日本人にとって当たり前のことが世界では当たり前でないんだと驚き、日本人に生まれたことを誇りに思うようになっていきました。

世界が日本人を尊敬し、信頼してくれる第一の理由は、その道徳心の高さにあるということ、これを私たちは忘れてはならないと思います。 さらに、この道徳心の高さと関係があるのでしょうが、日本人が世界から賞賛される理由の一つとして、私は「労働観」を挙げたいと思います。 日本人以外の多くの民族にとって、働くことは契約であり、言い換えれば、「自分の時間をお金に変えること」です。でも、日本人は違います。「はたらく」とは「傍(はた)の人をラクにすること」、つまり日本人にとって働くことは、「自分の時間を誰かの喜びに変えること」であり、単なる「契約」を超え、「日本人の美徳」だと思うのです。

この本には、日本のODAによって導入された、インドの地下鉄の話が出てきます。インドの人々は、日本がお金や技術を提供したことに対して感謝してくれていますが、それ以上に、地下鉄の建設工事とその後の開業準備を通じて、日本人の労働観を学んだことが、大きかったと述べています。 おそらく今後、日本が国際貢献していくには、この技術力と労働観(「高い精神性」と置き換えてもいいかもしれません)が柱になるのではないかと思いました。それほどこの本は、私たちの進むべき道に対して、示唆に富んでいます。 作者の名前を見て、ギョッとする方がいらっしゃるかもしれませんが(笑)、失言や漢字の間違いもなく、素晴らしい出来栄えなので、先入観を取り払って、じっくり読んでいただけたら嬉しいです。

私は古都・奈良が大好きですが、その中でも一番のお気に入りは唐招提寺(とうしょうだいじ)です。空の青と木々の緑、それに真っ白な玉砂利。境内はコントラストが美しいだけでなく、清浄な空気に包まれていて、まさに“聖域”といったイメージで、開祖・鑑真和上(がんじんわじょう)の気高い精神が今でもそこに生き続けているような感じがします。

「若葉して 御目(おんめ)の雫(しずく) ぬぐはばや」 これは、俳聖・松尾芭蕉が、青葉あふれる初夏に唐招提寺を訪れ、鑑真和上の座像を拝した時に詠んだ句です。 ときは、奈良時代。唐の高僧・鑑真は、幾度もの難破の末、12年もの歳月をかけ、その途中で失明しながらも、ついに日本渡航を成功させ、志を成就させます。

その鑑真和上の座像は、当然ながら目を閉じています。その閉じた目には、悲しみの雫が宿っている。その雫を、境内に照り映える若葉を用いて、拭ってさしあげたい……そんな句です。 芭蕉は、鑑真の成し遂げた偉大な業績に思いを馳せ、同時に鑑真の悲しみや労苦に対し、深い思いやりといたわりの眼差しを向けたのでしょう。そして、この若葉あふれる美しい奈良の自然を、鑑真和上にひと目、見せてさしあげたかった……そんな思いも込めたのかもしれません。

初夏の唐招提寺は最高です。境内の景色も素晴らしいですが、何と言っても、鑑真和上の慈悲の心、そして芭蕉の優しさに触れられるのが、この季節なのです。 鑑真和上の来朝というのは、日本古代史上、最も大きな意味のある出来事の一つだったと言えるでしょう。

井上靖氏は、この事実をもとに、鑑真来朝に人生を賭け、極限に挑み、木の葉のように翻弄される僧たちの運命を、見事に描ききりました。 私がこの本を初めて読んだのは、中学2年生のとき。情熱の塊で、不屈の精神を持った栄叡(ようえい)と、彼の情熱に引きずられるようにして、歴史の渦に身を投じていく普照(ふしょう)。在唐二十年、放浪の果てに、鑒真を伴って普照ただひとりが故国の土を踏んだと知ったとき、私は言いようのない感動に包まれました。人には、天から授かった役割があるのだということを実感し、心が震えたのです。

私は著書や講演で“天命追求型の生き方”というものを提唱していますが、私にはじめて“天命”を意識させてくれたのが、この本です。そういう意味で、この本は、私の人生になくてはならない一冊です。 作品のクライマックス(あくまで私の基準です)は、日本上陸を目前に控えた船内。普照が目覚めると、「照、照」と優しく彼の名を呼ぶ声が聞こえます。声の主は、師である盲目の鑑真でした。あまりにタイミングがいいので、「なぜ自分が目覚めたことがわかったんだろう? もしや和上は見えているのではないか?」と、驚きを隠せない普照に、鑑真が種明かしをするのです。「先ほどから何回も呼んでいたのだよ」と…。 私はこの場面を読んだとき、まるで自分が普照になったような錯覚を起こし、鑑真和上の優しさに胸がいっぱいになったことを覚えています。 今は日中関係がギクシャクしていますが、鑑真和上のような日中の架け橋になった人物がいたということに、私たちは感謝の気持ちを持ち続けたいですね。感謝の歴史だけは、誰にも書き換えることはできないのですから…。

創業から200年以上経過した企業を「200年企業」と呼びますが、世界に5000社以上存在する200年企業のうち、その6割に近い3000社以上が日本の企業であるということを、みなさまご存知でしょうか?

日本型の経営は、なぜ永続性に優れているのか。ずっと追求していた私でしたが、ようやくこの本に出会え、腑に落ちました。

富山には、300年続き、今なお力強く、脈々と営まれている「商い」があります。それは、江戸時代から続く富山の薬売り。全国くまなく歩いて、お客様を訪問し、半年(または1年)に1度、使ったぶんの薬の代金だけをお支払いしていただく。そして残った薬も含めて、新しい薬一式に取り替え、また半年(または1年)後に訪問する、置き薬を提供するのが、富山の薬売りです。

この富山の商人の商いには、日本が世界に誇る、事業の永続性の根幹になるものが凝縮されていると私は感じています。その根幹となる要素は、大きく3つ挙げらると思います。それは世界に冠たる技術力の高さ、崇高な精神性、そして消費者も生産者も、世間も喜ぶ仕組みづくりの素晴らしさです。

本書は、家業として、富山の薬売りを受け継ぐ著者が、どのようなことを仕事の根幹として大切に継承してきたかを教えてくれます。富山の地が育んだそのセンス、感性は確実にそこに育つ人々を育て、日本有数の事業家を多数生み出してきました。安田財閥創業者・安田善次郎氏。浅野財閥創業者・浅野総一郎氏。コクヨ創業者・黒田善太郎氏。YKK創業者吉田忠雄氏。ホテルニューオータニ創業者・大谷米太郎氏。丸井グループ創業者・青井忠治氏。

本書を通じて、このような錚々たる事業家を生み出してきた富山の商人の精神を学び、実践し、その感性をわたしたちそれぞれの本業に活かしていくことで、日本人が本領を発揮できる、永続性重視の事業を営むことができると確信しています。

外国の方に日本のことを説明しようとすると、実は日本語でも上手く説明出来ないことがあることに気づきます。日本について、これぞ日本だよね!という話題が16テーマ掲載されているこの本は、シンプルに日本のことを学ぶのにうってつけの本です。日本語と英語が併記されていますので、「英語はちょっと苦手」という人でも安心して読んで頂けますが、2019年ラグビーW杯日本大会、2020年東京オリンピック・パラリンピックなど沢山の外国人の方が日本にやってきます。せっかくなのでちょっと英語も勉強して、外国人の方達とLet’s Talk About Japanしませんか?(富田欣和)