推薦本:『とてつもない日本』(新潮新書)

かつて私は日本が嫌いでした。戦後教育を受けて育った影響で、日本人は世界中から嫌われているに違いないと、私は決めつけていたのです。

嫌いな日本に留まりたくない、将来は海外に繋がる仕事がしたいと思った私は、大学を卒業すると、航空会社に就職しました。そして希望していた国際線に乗務するようになったのですが、海外に行って驚きました。日本は、世界中から嫌われているなんて、とんでもない! 実際はその逆で、初めて会った人が、私を信用したり、親切にしてくれるのです。

「どうしてそんなに私によくしてくれるの?」と尋ねると、彼らは決まってこう答えます。

「あなたが日本人だから」

“日本人”であるということが、まるでブランドのように感じられました。

私が海外で出会った人の中には、こんな話をしてくださった方がいらっしゃいます。

「僕は以前、日本に住んでいたことがあるけど、驚いたよ。クリーニングに出していたコートを取りに行ったら、きれいにアイロンがけされたコートと一緒に、ビニール袋に入った小銭を手渡されたんだ。僕のコートのポケットに入っていたんだってさ。僕はいろんな国に仕事で行ったけど、そんな経験は日本だけだよ」

この紳士の言葉は、以下のように続きます。

「お金が戻ってきたことだけでも驚きに値するのに、そのクリーニング屋の店員さんはね、“コートをお預かりする時に、私がきちんと確認していなくて、申し訳ありませんでした”と、丁寧にお詫びしてくれたんだよ。いやぁ、感動したよ」

さらに、こんな冗談とも本気ともつかないことをおっしゃる方もいらっしゃいました。

「私はね、国際的なNPO法人に関わっていてね、いろんな国の人が役員を持ち回りでやるんだけど、日本人が会計をした時だけよ、不正がなかったのは」

こんなエピソードを耳にするたびに、私は日本人にとって当たり前のことが世界では当たり前でないんだと驚き、日本人に生まれたことを誇りに思うようになっていきました。
世界が日本人を尊敬し、信頼してくれる第一の理由は、その道徳心の高さにあるということ、これを私たちは忘れてはならないと思います。

さらに、この道徳心の高さと関係があるのでしょうが、日本人が世界から賞賛される理由の一つとして、私は「労働観」を挙げたいと思います。

日本人以外の多くの民族にとって、働くことは契約であり、言い換えれば、「自分の時間をお金に変えること」です。でも、日本人は違います。「はたらく」とは「傍(はた)の人をラクにすること」、つまり日本人にとって働くことは、「自分の時間を誰かの喜びに変えること」であり、単なる「契約」を超え、「日本人の美徳」だと思うのです。

この本には、日本のODAによって導入された、インドの地下鉄の話が出てきます。インドの人々は、日本がお金や技術を提供したことに対して感謝してくれていますが、それ以上に、地下鉄の建設工事とその後の開業準備を通じて、日本人の労働観を学んだことが、大きかったと述べています。

おそらく今後、日本が国際貢献していくには、この技術力と労働観(「高い精神性」と置き換えてもいいかもしれません)が柱になるのではないかと思いました。それほどこの本は、私たちの進むべき道に対して、示唆に富んでいます。

作者の名前を見て、ギョッとする方がいらっしゃるかもしれませんが(笑)、失言や漢字の間違いもなく、素晴らしい出来栄えなので、先入観を取り払って、じっくり読んでいただけたら嬉しいです。

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